【記事紹介】 日経流通新聞(1998/07/23)23ページより

中心市街地再生に向けて英国の現場から(2) ノッティンガム――都心を一つのSCに。


 人口二十八万人で、中央イングランド東部地方の中核都市であるノッティンガムは、ロビン・フッドのシャーウッドの森やレース編みなどで有名。中世と産業革命時代のたたずまいを今も残している。

 九〇年代に入り、タウン・センター・マネジメント(TCM)など新手法による中心市街地活性化を推進。ある全国調査で「最も成功した中心市街地」と評価されるなど成果を上げている。商圏人口は二百万人で、九七年の商業売上高は前年比約一〇%増えた。

 活性化のきっかけは、九一年にシェフィールドで開業した巨大ショッピングセンター(SC)、「メドウ・ホール」だった。ノッティンガムからシェフィールドまでは車で北にわずか四十五分程度。近距離にできるSCに対する危機感がバネになり、中心部の魅力づくりに弾みがついた。

 まず、都心部の大規模なモール(歩行者専用道路)化が進んだ。七〇年代に市当局が提案した当時は、中心部の商店主らが車を利用する買い物客の減少を恐れて支持せず実現しなかった。

 しかし、メドウ・ホールの構想が明らかになると、理解が広まって具体化。八九年には基本的な計画が固まり、九二年ごろには事業費が約五千万ポンド(現在のレートで約百二十億円)に達するモール化が完成した。

 モール化の基本は歴史と文化を持つ都心そのものを、魅力的なレジャーとショッピングの共存する空間に再構築すること。つまり、ショッピングとレジャーで「一日楽しく過ごせる」街づくりだ。中心部約二・五平方キロメートルには、百貨店五店と商店約千三百店が集まっているが、回遊しやすいようにモールを整備した。

 九一年には、官民共同で任意団体の「シティ・センター・マネジメント(CCM)」を設立した。商業振興にとどまらず、雇用創出にも力点を置く総合的な取り組みのためにTCMを実践する組織。将来は、企業組織にする意向だ。

 英国のTCMとは、「モータリゼーションによる都心の空洞化に対抗し、中心市街地を持続的に整備・繁栄させるための民間と公共の緊密な協議に基づくNPO(非営利組織)的調整活動」を指す。特定の事業や財源に限定されない柔軟な活動だ。地域の課題に応じてボランティアとしての活動を展開する一方、時には公共事業を誘導する。

 ポイントは都心のマネジメント(経営)。都心をあたかも一つのSCのようにとらえ、モールや駐車場の整備、防犯活動、テナント・商品構成の立案・実行、マーケティング、プロモーション活動などを展開する。CCMの場合も(1)店舗、レストランのガイド作成(2)街の清掃(3)ハト対策(4)看板の監視と清掃(5)駐車場の質の向上――など様々な活動に取り組んでいる。

 CCMの年間予算規模は現在のところ約十三万ポンド(約三千万円)。県、市のほか、銀行、スーパー、ファストフード会社、バス会社などが一定額を拠出する一方、個別事業ごとにスポンサーが資金を負担している。資金集めはCCMにとって重要な業務の一つであり、投資家に対する宣伝活動にも取り組んでいる。

 事業の内容は、自治体、企業など出資者の代表を中心とする約三十人で構成する運営委員会が決定。タウン・センター・マネジャー(都心経営の社長)とサブ・タウン・センター・マネジャー(同副社長)の下に交通、環境、治安など様々なワーキンググループを置いて事業を展開する。活動に応じて参加する非常勤のボランティアスタッフも多く、人員は流動的だ。

 英国には、TCMに取り組む同様の組織が各地にあり、会社組織への切り替えも進んでいる。各団体はそれぞれ独立採算が基本。ただ、全国団体のような性格を持つTCM協会があり、これが調査研究や政府への提案などを通じて各地のTCM活動を支援している。(兵庫大学助教授 根本敏行)